サイリスタ式の調光ユニットができたことにより、電気的にコントロールできるようになり(オートトランスの場合モータを付けて回すしかなかった)調光卓が生まれました。ボリュームやフェーダで簡単に多チャンネルを操作できるようになりました。では操作信号にはどんなものがあるか見てみましょう。

アナログ式

一般には0-10Vの直流信号が多いようです。(一部に0-12Vやマイナスの信号、その他の電圧を使ったものもあるようです。)
アナログでそのまま信号を送ると信号線は送る回路数プラス1本(コモン)が必要になります。45チャンネルなら46本というように回路数が増えると信号ケーブルはどんどん太く重くなります。
また長距離になると線の抵抗により電圧も少し下がることになります。しかし後で述べる他の方式と違って信号の遅れはありません。

アナログ式

回路数+1本の信号線が必要

アナログ時分割方式

近年、回路数の増大とともに信号線のマルチ化では重くて大変だということで考えられたのが、アナログ時分割方式です。
DMXの出現以前に考えられた方法で、当時はフルデジタルは技術的な問題(今ほど早いCPUもなかったし良いものは大変高価でした)などで難しく、アナログ・デジタル混在のようなものです。
この方法は、最低3本の線があれば(信号の信頼性や遅れを考えなければ)何チャンネルでも送れます。
簡単に言うと送り側(卓側)と受け側(ユニット側)にまったく同時に動く切り替えスイッチがあるようなものです。途中を流れる信号線はアナログ信号(たとえば0-10V)そのままです。もう一本の線はコントロール信号を送って両方の切り替えスイッチのタイミングを合わせています。

アナログ時分割方式

切替スイッチはすごく早く動く

受ける側にはサンプル・アンド・ホールドという回路をおいて、次にスイッチが切り替えられて信号がくるまで前の電圧を保持するようになっています。 この方式では、スイッチで順次切り替えていくので信号の遅れが生じるのと、信号自体はアナログ信号そのまま送っているので電圧が下がったりノイズが乗ったりすることがあります。
この方式にはAMX192やKAMSなどがあります。

デジタル時分割方式

世の中デジタルが何にでも入り込んできて、安く良いシステムが組めるようになりました。PMXやDMXの登場です。
この方法では最低2本の線で送ることができます。一本の線にデジタル信号でデータを順時送っていきます。いろいろな方法がありますが、ここではPMX(パルサー社)とDMXの信号についてごく簡単に話しましょう。(ほかの方法は知らないんですけど)
PMXは単芯シールド線で送る初期に作られたデジタル伝送です。信号自体は、よくパソコンなどで耳にするRS232Cと呼ばれる方法とその信号を強化して距離を伸ばしたRS423と呼ばれるものです。
フェーダの0から100%まで(アナログで言う0から10Vの信号)を127段階に分けて最大256ch送ります。信号はch番号とレベルを一組にして順に変化したチャンネルだけ送ります。
変化したチャンネルだけ送るので少ないchだけ動かしたときには非常に早いのですが、全体のスピードはあまり早くないので、たくさんのchを同時に動かしたとき(全体のフェードイン、アウトなど)には送るデータが増えますから、とたんに遅くなってしまい目に見えてずれや遅れがでてきました。
全体のスピードが非常に速くて多くのチャンネルを送ったときも遅くならなければ、変化したチャンネルだけ送るという方法は無駄が少なくよいのですが。

デジタル時分割方式

この方式では卓側の切替スイッチは常時フェーダのレベルを監視していて、変化のあったチャンネルのデータだけをユニット側に送ります。
ユニット側では来たデータによってスイッチをそのチャンネルに切り替えて新しいデータに変更します。

DMX512

DMXは最大512chのデータを1chあたり256段階で送る2芯シールド線のシステムです。
上記の方法とは違い最大512chのレベルだけを送ります(ch番号は送らない)。
このためDMXはch1から信号の変化にかかわらずすべてのchのレベルを常時送っています。
たとえば512ch送るシステムでは最後の512chだけあげても1から511chまでゼロのデータをすべて送っています。
送り側は1ch目を送る前に、これから信号を送る合図を送って、受け側もこの合図で受ける準備をします。
そして1ch目からレベルだけを順番に送っていきます。

ところでPMXは1芯シールドで送っているのにDMXはなぜ2芯シールドなのでしょうか。
それはノイズに強くするためです。
バランス回線では信号線の途中でノイズが乗っても受け側で信号だけ取り出す方法があるのです。
アナログでも使われる方法です。音響の特にマイク回線は、ほとんどが(カラオケのぞく)バランス回線です。
ちょっと耳慣れない方もいるかと思うので原理をちょっと

バランス方式 (反対語 アンバランス方式)
バランス回線の話をする前にまず簡単なアンバランス(通称アンバラ)回線の話をしましょう。
これは、照明では通常のアナログ信号を送っている方法です。
信号線とそれに対になるコモン(アース)の2本です。
たとえば+5Vを送ることを考えましょう。(信号にも算数の足し算引き算などが成り立ちます。)
送信側で+5Vを送ると反対側の受信側に+5Vが出てきます(線の抵抗は無視します)。

ノイズがないときは何も問題ありません。

ここで線の途中でノイズが入ったとします。すると出力には+5V プラス ノイズが出てきます。このノイズは簡単にはとれません。

バランス回線ではどうでしょう
模擬的に説明するとバランス回線では信号のプラス(ホット)とマイナス(コールド)があります。
マイナス信号はプラス信号を逆にしたものです。たとえば+5Vに対して-5V(DMXの場合ちょっと違いますが原理は同じ)です。アンバラの時と同じように+5Vを送る時を考えてみましょう。
送信側では+5Vと-5Vを送ります。
受け側では引き算回路(差で動くので差動回路といいます)に通します。この回路は簡単に作れます。
式で書くと、+5V-(-5V)=+10Vが出力されるので出力で半分にしてやります。これで元と同じ+5Vが得られます。(こう書くとアンバラに比べるとちょっとややこしそうですが実は簡単なんです)

ではノイズが入った場合はどうでしょう。
2芯シールドでは心線の2本は同じ条件で同じ1本の線の中にあります。ノイズが外部から入った場合ほとんど2本ともに同じように乗ります。式で書いてみるとノイズをNとすると出力側の一本の線には(+5V + N)、もう一本の線には(-5V + N)が出てきます。この段階ではアンバラの時と同じようにノイズが入った信号になっています。差動回路に通してみると(+5V + N)-(-5V + N)=+10Vあら不思議ノイズ同志が打ち消しあって信号だけが取り出せます。

DMXではさらにノイズが入りにくくするため信号線2本のまわりにシールドがついています。
ただし、バランス回線で消せるノイズは式で分かるとおり、2本の線に同じようにノイズが乗ったときですが、外来ノイズの多くはこの方法で打ち消すことができます。


では次は、DMXについて問題点も含めてもう少し詳しくみてみましょう。


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